ココボロだとか好きだとか

大学院生による独り言と備忘録

ALPS処理水海洋放出について

またALPS処理水についての話題が盛り上がっているのでもう一度。

 

 

 

・そもそもトリチウムとは

 

自然界に存在する原子は原子核電子が組み合わさってできている。そのなかでも原子核陽子中性子とで構成される。

科学では陽子の数によって元素を分けている(陽子が一つなら水素、二つならヘリウムといった具合)。しかし同じ元素だとしても重さが同じとは限らない。なぜなら水素で言えば

陽子が一つだけでできているもの(軽水)、

陽子が一つと中性子が一つでできているもの(重水)、

陽子が一つと中性子が2つでできているもの(三重水素)

の三種類存在しているから。

このように同じ元素でも重さが違うものを同位体と呼ぶ。その中で特に半減期が短く、放射線を出すモノ(放射能を持つもの)を放射性同位体呼ぶ。

先程挙げた水素の同位体のうち、放射性同位体三重水素のみである。巷ではこの三重水素のことをトリチウム(T)と呼ぶ。

 

 

 

・何が危ないのか

 

大量に浴びると皮膚に斑点ができたり、毛が抜けてしまったり、死んでしまったりする

放射線を浴びると癌になったり遺伝子に影響が出るかもしれない

わざわざ影響を分けたのはこの二つは全く異なるからだ。

前者を確定的影響、後者を確率的影響と呼ぶ。

 

先に確定的影響について少し話すが、これは正直どうでもいい。確定的影響とは大量に放射線を浴びた際に発生する問題であり、チェルノブイリの事故でも福島第一の事故でも一般市民に対しては問題にならなかった。放射線業務従事者や事故時の緊急対策を行う人は配慮するべきだが、今回は関係ないので省略する。

 

そして後者は名前の通り確率的に起きる。何が言いたいかというと必ずしも起こるわけではない、ということだ。極微量しか放射線を浴びなかったとしても起きてしまうかもしれないし起きないかもしれない。

 

よく専門家ぶった者が「微量のトリチウムは影響はありません、安心です。」などというが、これは嘘だ

なぜなら確率論的に発生するから、微量でも影響があるかもしれない。それに加えて安心とは個々の感情であるから、科学技術を用いて安全を再現できても、安心は決して再現できない

 

もっとも私からすると海洋放出程度で、影響が出るかといえば疑問ではある。しかし可能性を否定できない。そして専門家はそのことを認めるべきである。

 

つまり何が危ないのか。

トリチウムを放出することにより「癌になる可能性や、子孫に影響が出る可能性が上昇する」これがトリチウムの危険性である。

 

 

 

・「てかトリチウム取り除けばよくね!」って?

 

端的に言えば無理だ。なぜなら先程述べたようにトリチウムは水素の同位体だからである。

他の放射性物質であるセシウムストロンチウムなどは元素が違うため化学的に分離できる。なんでできるかって言われると、詳しいことは難しい。たとえば「水素は火を近づけるとポンと音を出して燃える」とか「ヘリウムは燃えたりしなくて安定」とか、「鉄は磁石につく」とか、特定の元素によって性質が違うっていうのはわかってもらえるだろう。

だから元素が違えば性質が違うから分離できる。実際は似た性質があったりして大変だけど、だいたいできる。

けど同じ元素だと難しい。なぜなら性質が一緒だからだ。濃縮と言って同位体ごとに集めたりする技術はあるが、高い捨てるものに対してそんなに費用はかけられない

 

 

 

・「安全より金を取るのか!」って?

 

まあそのとおりである。ていうよりも、そもそも微量なら工学的には安全である。工学における安全とは「リスクが小さいこと」であり、そのリスクとは「リスク=影響の大きさ×影響の出る確率」だからだ。

極微量の放射能であれば影響の出る確立は限りなく小さいためリスクも限りなく小さくなる。だから工学的には安全である。

 

「確立が少しでもあるなら安心できない」と言われたらそのとおりであるが、どうしようもない。

 

ところで、世の中歩いてるだけでも交通事故で死ぬかもしれない。2019年は3000人以上死んでる。日本の年間死者は137万人だから、450人に一人は交通事故で死んでいる。あれ意外と大きくないか。

安心したいのなら家から出ないことだ。まあ去年は家にいたら車が突っ込んできて死んだってニュースもあったけど。

けど家から出なきゃ生きていけない。だから家から出て満員電車に乗って働いたりしてるんだと。そのメリットが交通事故によって死ぬリスクよりも大きいから家から出るんだと。

 

 

 

・「でもおれは原子力のメリットなんと受けてない!」って?

 

そういうのやめませんか。私の好きな音楽家は「たかだか電気に命をかけるなんて」とおっしゃっていますが同意しかねます。生活保護者のエアコンの使用するか否かといった問題が2010年頃にあったのを忘れたのだろうか。いまや文化的で最低限度の生活ですら電気の使用は欠かないというのに。

電気の使用は憲法で保証されている最低限度の生活にすら必要であり、たかだか電気などでは決して無い

「でも原発はおもに関東圏や大都市にしか電気を供給してないじゃないか」って、そのとおりだ。けれど東京での消費が日本の経済に与える影響は小さくない。

大都市での経済発展は間違いなく日本全体に影響を与えている。工場を動かす電気だってみんなそう。あなたの家に届かないにせよ、首都圏で使用された電気のおかげで地方に仕事がゆき、様々な生産が為されそれがために日本の経済が回るのだ。確かに貴方の同意の上で原子力が選ばれたわけではないが、日本で生活する以上そのメリットは享受しているはずだ。

 

 

そろそろ疲れてきたので締めますが、もう一つだけ言いたいことを。

 

先程少し出てきましたが、影響が出る可能性を下げることはできますしかし高いんですよ。例えば遠心分離してもいいです。他にも何年もかけてゆっくり放出すれば確率は下がります。けど高いんです。私としてはそもそも安全なものに金をかけるよりも、東北の復興とかに金を回してほしいんです。

私は関東住みですが、東北には何度も行きました。色んな話を聞きました。だからこそ、ゆっくり放出することに金をかけるんじゃなくてもっと再建のために金をかけてほしい

 

あと「安全なら東京湾に流せよ」とか言われてもいますが、私は賛成です風評被害を防げるのなら。何十年もかけて福島で放出するよりも、関東とか全国とかに分けて数年で放出してしまったほうがいいと思うんです。確かにお金はかかるかもしれませんが風評被害を防ぐ重要性はあると思うんです。それが必要経費であるなら私は賛成します。けれど必要のない使いみちなら文句を言って問題ないでしょう。

 

 

以上です。質問あればお気軽に。