ココボロだとか好きだとか

大学院生による独り言と備忘録

クロソイから基準値以上の放射性セシウムが検出された件について

註:本稿は2021年2月の内容

 

今日は少し真面目な話題。

福島県沖合で獲られたクロソイに基準値以上の放射性セシウムが検出されたことについてニュースになっているので簡単な計算を行いたいと思います。

シーベルト(Sv)を出すことが目標です。(実効線量)

 

結論を言えば500Bq/kgの放射性セシウムを含むクロソイ1kgを食べたときの被曝量は、

最大値で0.0066μSv 0.0066[mSv]です。

 

 

まず、ニュース参照元ですが

[1] NHKニュース, 『福島県沖 クロソイから基準超の放射性物質 出荷を停止』 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210222/k10012880681000.html

こちらです、ご確認ください。その他参考は文末に載せます。

 

 

 

NHKニュースによると1kgあたり500Bq放射性セシウムが検出されたようですので数値は500Bq/kgを用います。情報元によって480Bqともされていますが、安全をとって500でいきたいと思います。

 

 

 

まずは、前提知識

福島第一原子力発電所(F1)事故以降、検査されているセシウムは質量数で言えば134と137との二核種です。

F1事故では同じ放射能セシウム134と137とが放出されたと報告があります。

 

セシウム134は半減期が2.0652、β崩壊をする核種で崩壊エネルギーは2.059MeVです。崩壊後は安定同位体バリウム134となります。[2]

続いてセシウム137は半減期30.08年、β崩壊核種でそのエネルギーは0.514MeV(94.4%)と1.176MeV(5.6%)。崩壊後はバリウム137mとなり、半減期2.552分でγ崩壊。その時のエネルギーは0.662MeVです。30分で永続平衡が成り立つようです。[3]

 

 

と長々書きましたが、上記のうち計算に用いる数字は半減期のみです。

 

 

会津若松市健康推進課によると実効線量係数は下図の通り、計算については文末、参考文献[4]を御覧ください

f:id:taro0219:20210223202221j:plain

fig.1, セシウムの実効線量係数[4]

 

であるので、後はセシウム134とセシウム137のベクレル比が分かれば計算できます。

 

これ以降は少しマニアックな計算ですが、今回は簡単のため解説等は省きます。

コメントくだされば対応いたします。

 

3.11からの日数は3,636日であるから約9.962年経過しています。

ということで、クロソイを1kg食べたとして全て計算しますと、実効線量は

f:id:taro0219:20210224220455j:plain

計算

ということで、実効線量の最大値は0.0066μSvです。

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2023,10,01追記

コメントでの指摘の通り、今回用いた換算係数は〇〇[mSv/Bq]でした。上記の計算は〇〇[μSv/Bq]とおよそ千分の一で過小評価していました。そのうえ、換算係数はセシウム134が0.000019[μSv/Bq]、セシウム137が0.000013[μSv/Bq]です。

これを用いて再計算すると

セシウム134 21.27[Bq]×0.000019[μSv/Bq]=0.0004041

セシウム137 478.7[Bq]×0.000013[μSv/Bq]=0.006223

であり、合計は0.006627 0.0066[mSv]です。

結論は変わりませんが、過小評価していたことは間違いありません。単位の取り扱いについてもっと注意深く行うべきでした。反省しております。

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基本的に預託線量は生涯で100mSv(預託線量)を超えないようにすることが目標であり、ここから一般公衆の人工放射線による被爆は年間1mSv(実効線量)という数値がきています。(これはあくまで数値以下に抑えることが公衆への影響を抑えるために適切ではないかという仮の値で根拠は無いとは言わないがやや曖昧)

最悪の状態を考えても、μはミリのさらに1/1000であるため、クロソイ1kgをまるまる食べても0.0000066mSv0.0066[mSv]であり、年間1mSvには到底届きません。

 

 

 

 

 

以上雑な計算でしたが、"数字が低いから安全です"っていうわけではありません。

無用な被ばくをシナイに越したことはありませんし、がんになるリスクは表すことができてもその影響までは表せません。

ただ、確率論からして昨日クロソイを食べたから体調が心配だとか、将来癌になるのではないかという心配は要りません。クロソイ一匹とかよりも普段の食生活の方がよっぽど影響があります。

 

福島県漁連はクロソイの出荷を止めたので、もうあまり関係ないかもしれませんが、放射線、ベクレル、シーベルトというのは食べたら病気になるわけでも死ぬわけでもありません。

一応断っておきますが、県漁連の出荷停止は正しい判断です。基準値を超えたんだから出さない。当たり前です、だってそういうお約束をしたのですから。

 

放射性物質というのはあくまで大量に摂取すると癌になる可能性が上がるのであり、少量であれば影響は大きくないと思います(曖昧な表現ですが、絶対安全やリスク0などという言葉は科学的ではありません)

 

ですので私が言いたいのは、クロソイが大好物だとか言うなら1尾くらい食べても直ちに影響が出ることはありませんので食べていただいても構いません。あなたがそれでもいいと思うのならということです。

 

 

 

そして、本稿はすでにクロソイを食べてしまった方の安心を目的としたものであり、安全の保証は致しません。

最悪の影響を考えても、直ちに影響が出るレベルではないため、そのリスクを許容できると考えるのであればいまからクロソイを食べても、やっぱり嫌なら食べなければいいだけです。

 

用法用量を守って豊かなクロソイライフをお楽しみください。

以上

 

参考(webページのアクセスは2021年2月23日現在)

[2] wikipedia  セシウム134 - Wikipedia

[3]柴田徳思, 通商産業研究社, 放射線概論第12版(2019)

[4]会津若松市健康増進課, 内部被ばく線量測定結果について

https://aizuwakamatsu.mylocal.jp/documents/20181/902134/kekkanituite.pdf