久しぶりに少しだけ真面目な話を。
人工放射線。
聞いたことありますか。
このワード、ネットとかでは結構誤って理解されているように思います。
たまにこんな事を言う人がいます
「人工放射線なんてワード使ってる時点でお察し」
みたいな感じで、そもそもこの言葉が"科学的でない"と捉えていらっしゃる。
これは間違いです。
人工放射線は存在しますし、これはれっきとした放射線防護の分野における専門用語です。
一度でも防護関係の専門書を読めば必ず出てくる単語です。放射線の防護や管理についてはその線源を人工放射線源と自然放射線源との２つに分けて考えているのです。
もしも人工と自然の区分けがなかったらどうなるか？
全く同じ施設を作ってもある場所では基準を満たし、ある場所では基準を満たさないという事態に陥ってしまいます。
例えば、西日本は花崗岩質の地層が表面に出ているため、東日本と比べて自然放射線量が高いです。ですから、もしも全く同じ線量基準の施設を西日本と東日本に作ったら、放射線の種類を人工と自然とで区別しないなら、西日本は放射線量が高いので基準を満たさず、東日本でOKみたいなこともあり得ます。
そしてこういったことにならないように、防護の観点から人工と自然とで分けているのです。
人工放射線源には原発による被爆や、レントゲンやCTを始めとする医療被爆など人工的に製造した放射性核種や、発生させた核分裂、放射線(加速器)などが当たります。
一方自然放射線源とは昆布などに含まれるカリウム40や、大気圏で生成される宇宙線、その他花崗岩や、大気中の希ガス元素などが分類されます。
ただし、重要なこととして、人工であろうと自然であろうと放射線は放射線です。与える影響は一緒です。
自然なら良い、人工だから悪いわけではありません。人工放射線、自然放射線の呼び分けは防護の観点からの分類で、性質による分類ではありません。もちろん自然界には存在しない核種や元素も存在する為、人工と天然とが全く同じという表現はやや正確性に欠けますが、Svという単位が同じなら影響は同じです。というよりも同じ結果が出るように考え出された単位がSvなのですから。
もう一度、人工放射線という言葉は放射線の管理や防護には大切な観点です。非科学的なものではありません。これは水素水にも言えるかもしれませんが、実際に存在するのに、一部ビジネストークとしてあまりに突飛な話をしたせいで、言葉そのものが間違いのような印象をもたれてしまっています。
そもそもみなさんが大好きな基準値の問題も、
「自然放射線源を除いた人工照射線源からの被ばくを、一般公衆の場合は一年間で1mSv以下に抑える方が良いのではないか」
という文言からきています。(一言一句正しいわけではありません、齟齬の無いように書き換えています)
これは本当に大切です。自然からの放射線が私達に与える影響はそう多くありません。そしてその影響が果たして私達にとってどのくらい"良いか"、"悪いか"は誰にもわかりません。だって放射線が0の環境なんてこの世に無いからです。
けれど帰納的に考えれば、いままで沢山の人が生きてきて、死んでいって、私達の今があるのです。そのあいだ自然放射線は常にそばにありました。なのできっと気にしなくても良いでしょう。
しかし人工放射線源により、被曝量が増えたらどうなるかはわかりません。確定的影響はともかく、がんや遺伝といった確率的影響は未知数です。
一応書いておきますと、私は年間2、3mSvほど被ばくが増えたとしても"大した影響"はないと思っています。なぜならケララやガラパリなどの高放射線量地域とその他の地域で優位な疾病の差異は報告されていないからです。
けれど、悔しいですが低放射線の影響なんて悪魔の証明ですから無害だなんて言えません。少しなら大丈夫だなんて言うのは間違いです。解明されていないことは分からないと言わなければいけない。これは科学の大前提です。
まあ何にせよ確率論なので、被曝が少ないに越したことはありません。
この年間1mSvという基準は科学的に無害と証明されたものではなく、100mSvの放射線を受けるとがんの確率が5%上がるので、その100分の1ならほとんど影響は無いんじゃないかと言う、仮説です。
それと、もう一つ大切なのはその被ばくを減らすために必要な対策は妥当かどうか、です。前にも書きましたが処理水排出に関して私は妥当ではないと考えております。
また、私は電力消費を賄うための原子力発電という選択肢は妥当だと思っています。発電のために高濃度放射線核種が生成されることも構わないと思っています。エネルギー資源のために。
ここらへんはセンシティブなので皆さんで考えて意見を持ってください。決して誰かと同じだからとか、誰かがこう言っていたとかは止めてください。考えて自分の意見を持つのです。
私は清志郎もブルーハーツも好きですが原子力には賛成です。彼らの音楽を尊敬し、好んで聞きますが原子力に対する意見に関しては賛同できません。
有名人やなんやらに任せるのは止めましょう。得意不得意や感性の違いがあるのです。許せる許せないの基準は人それぞれです。あなたはどうですか?
なんの分野に関してでも同じですが、単語のみを捉えるレッテル張りは議論ではなく中傷です。批評をするならそれなりの知識がないと誰からも相手にされません。言う分には自由ですが。
