ニュータウン 誰かが きっと
今夜シチューを 食べているんだろう ワオ!
最近はまた、キリンジのペーパードライヴァーズミュージックを聞き返している。
KIRINJI。別段好きな歌手というわけでもなく、彼(ら)との出会いはやはり渋谷系の系譜である。最後の渋谷系、あるいはポスト渋谷系と言われるCymbalsが好きで、そのヴォーカルである土岐麻子、彼女への楽曲提供をもとにきっかけとして、KIRINJIを聞くようになった。『ロマンチック』、土岐麻子の曲の中でやはり特段好きというわけではない。しかしながら、小洒落たピアノを軸になめらかに流れていくこの曲の雰囲気、とくにBメロなんかは随分とピアノが目立つのに、歌声の邪魔をしない。バランス感が非常によく、文句のない楽曲であると思う。
まあそんな曲がおそらく初めて聞くKIRINJIの曲で、その後は月次ながら『エイリアンズ』。Awesome City Culbは、昔で言うやっぱり渋谷系の雰囲気を持っていて好き。彼らがまだ5人だったころのミニアルバム、TORSOの中でエイリアンズをカバーしていたのだ。このアルバムの中ではエイリアンズの一つ前、『燃える星』が好き。Two of us進行(丸サ進行)と呼ばれるコード進行の曲は、ありきたりながらやはりおしゃれ。ちょっとした切なさを思わせつつ、男女のツインヴォーカルならではの甘い雰囲気で進み、二人の声があることによって男女両者に感情に思いをはせざるをえないというか、とにかくいい。
そんな彼らのアルバムを聞きまくるうちにエイリアンズが気になり、元曲を探り...ということでKIRINJIへと至ったのだ。ようやく。
ペーパードライヴァーズミュージックを選んだ理由はあまり重大ではなく、弟がまだいた頃の中のアルバムのうちで、ジャケット基準で選んだものがたまたまそれであっただけ。お気に入りは『野良の虹』と『雨を見くびるな』、『ニュータウン』、『五月病』である。
まああんまり長く書いたって仕方がない。
冒頭の引用、あまりにもあんまりな歌詞に私は心を打たれたのである。キリンジの五月病というタイトルの楽曲で、平易な文章で淡々と綴られる、何の変哲もない日常の風景の切り取りとった歌だ。
私はこういったありきたりな日常の言葉で、ありきたりな日常を語る文章を描きたいのだ。そしてそこに間違いなく残る私らしさを置くことができれば、まさしく個性の表出であり、文章を書くものとしての確固たる矜持となるのだと信じている。
よく云う、「私がこんな文章を書きたかった」という感情になったモノはいくつかある。その一つが今回の五月病であり、更新が途絶えても時折読み返しているブログだってその一つである。
ニュータウン 誰かが きっと
今夜シチューを 食べているんだろう ワオ!
ああ、私にはきっと、こんな素敵な文章を書けるようになる日は来ないだろう。当たり前の日常を当たり前のまま感動したい。私は、誰かにとっての日常を非日常のように思われて感動するのではなく、自らの目で、自らの日常に感動を見出せるようになりたいと思っているのである。