今思えば慶應通信の科目等履修生時代単位が、正課生になったあとに引き継がれる云々について個別の記事を書いていなかった。今後制度を利用する人の為に記録を残すことを目的に本稿を書こうと思う。
背景
私は1年前に法学部乙類の科目等履修生として、慶應義塾大学の通信課程(正確には慶應義塾大学 法学部 通信教育課程 乙類)に登録した。当時は別の大学の大学院生だったため、正課生としては入学できず、泣く泣く科目等履修生として登録することになった(慶應通信は二重学生を禁止していないが、通学で通っていた大学院が二重学籍を禁止していた)。
科目等履修生時代には夏季スクーリング科目を8単位、テキスト科目を2単位(いずれも法学部専門科目)、合計10単位を履修し、結果として10単位を修得した。
科目等履修生については以下を参照されたい(ウェブサイトから引用である)(引用元:科目等履修生 | 慶應義塾大学 通信教育課程)
科目等履修生とは
科目等履修生とは、生涯教育として特定の学問分野の知識を高めたい方、リカレント教育として仕事に関連する分野の知識を習得したい方が、文学部・経済学部・法学部で開講されている一部の専門教育科目から興味・関心に応じて特定の科目を履修するための単年度の制度です。試験(レポート課題等を含む)を受けることができ、合格すれば、単位と成績を修得できますが、学士の学位は得られません。また、教員免許状取得を目的とすることはできません。
1.関心のある分野の学びを深めるチャンスです
文学部、経済学部、法学部の専門教育科目のうち、通信授業(テキスト)、面接授業(夏期スクーリング、夜間スクーリング)で開講されている一部の科目のなかから学びたい科目を選ぶことができます。在籍期間は1年間。1科目から履修が可能で、年間10単位まで履修することができます。1年ごとに登録更新の審査を受け、許可を受ければ在籍を継続することができます。
(中略)
3.修得した単位は単位認定される場合があります。
科目等履修生として所定の期日までに修得した単位のうち、条件を満たしたものについては、正科生として入学した場合、卒業要件単位として認定される場合があります。
詳細は、正科生として入学後、確認してください。
ということで、前提はわかってもらえただろう。今回話したいのは、引用中の「3.修得した単位は単位認定される場合があります。」という部分だ。てか今気づいたけどこの節だけ「。」が付いてるのはウェブページ制作時のミスだろうか。
科目等履修生時代の様子
まずはかかった費用について、
選考料 2万円
登録料 4万円
テキスト科目受講料 1万円
スクーリング科目受講料 4万円
合計11万円(ただし、教科書やスクーリングの交通費を含まず)
あんまり特筆することはないのだけれど、簡単に科目等履修生時代の学生生活について残しておこう。
まず、出願から教材の送付までについて。私が登録した年は3月ごろに出願受付があり、書類作成や提出、学費入金を行った。3月上旬に出願し、3/29に合否結果が出た。4月の頭に入学手続きやら書類提出(住民表や誓約書など)を行い、4月の中旬に学生証が入った簡易書留書類、また、別の配達で諭吉BOX(と呼ばれる教科書などが入った郵送箱)が届いた。入学手続きから学生証やテキストの受領までは、大学から特に連絡はないため、手続きが問題なくできているかやや心配だった。
4月の下旬には通信教育課程の入学式が三田キャンパスで実施されるのだが、科目等履修生は入学ではない為参加できないとのことであった。残念。また、正課生と違うところとして学生証の学部が書かれる部分には「科目等履修生」の文字が印字されている。それ以外はあんまり違いはないと思う。
私が履修したのはほとんど夏季スクーリング科目であり、お盆休みのあたりから大学(日吉キャンパス)に通っていた。スクーリング中は学生証などを提示する機会は試験を除きなく、また試験時も机上に置いておく程度の為正課生との差は特に感じなかった。
スクーリングは6日間連続で、朝9:00から12:45までが午前の科目、昼13:45から17:30まで午後の科目の講義がある。つまり、3時間45分の講義×6日間で2単位、これが午前午後で合わせて4単位、を一週間で修得することができる。なお、6日目には試験があることが多いので、覚悟して臨まれたい。また、私は参加しなかったが、夏季スクーリングは三週間連続で実施されているため、正課生ならば最大で12単位取得できる。
昼休みは1時間で学食や購買を利用することができる。授業資料を紙でくれる先生もいれば、電子データで配布する先生もいるため、タブレットやPCが利用できた方がいいだろう。それ以外にも、出席をgoogleフォームで行ったり、出欠表を書いたりする場合もあった。また、キャンパス内は大学などの教育機関で共通して利用することができるeduroamというwi-fiがあるため、keio.jpのページから接続方法などを確認しておくとよろしい。
テキスト科目については、レポ―ト提出と科目試験で単位を修得した。レポート提出はウェブ上のシステムを利用して行ったため、特段郵送を利用することはなかった。科目試験は大学のキャンパスで受験した。慶応通信では4月、7月、10月、1月と年に4回の科目試験があり、テキスト科目の単位を取得するためには必ず受験する必要がある。三田キャンパスの他、札幌、盛岡、先代、東京、高崎、新潟、長野、松本、甲府、静岡、浜松、名古屋、富山、金沢、福井、大阪、頭、岡山、広島、高松、福岡、熊本、鹿児島、那覇の試験会場でも受験できるようになっているが、会場によっては、実施されない月(例えば2024年において松本は4月のみ実施された、一方で名古屋は4回すべて実施等)があるため、よく確認されたい(参考元)。
私の場合は、レポートは2回再提出(つまり、初回と合わせて3回提出した)、科目試験は1発合格だった。こればっかりは科目との相性や参考文献の入手しやすさなどが関係してくるためなんとも言えないが、そんなに簡単だというわけではなかった。また、レポートを書く際には欲しい文献が手元になく、仕方なしにウェブ上の参考文献(と言っても紀要や〇〇リポジトリなど最低限アカデミアチックなものを選んだ)を使ったが、「〇〇の話題については、参考になる本が慶應の図書館にもあるから確認した方がいい」といった旨のコメントをもらった。慶応通信では卒論指導登録まではスクーリング期間を除き図書館で本を借りることができない為、当然科目等履修生の私は貸し出しができず、少々面倒であった(まあこれについては履修科目が通常3年次の科目であり、卒論登録されている場合が多いのもあったのかもしれない)。
また、科目等履修生は1年単位で登録する制度であるため、仮にレポートと科目試験のいずれかのみ合格のまま翌年に引き継ぐのは難しいので、一年間で両方合格できるように予定を組むべきだろう。さらに、慶應通信では、科目試験を受験するためには当該科目のレポートが提出済みである必要があるため新規登録・入学の場合は必然的に4月の試験を受験できない。3回しかチャンスはないので、複数のテキスト科目を履修する場合には計画性が大切になってくるだろう。
正課生入学時の科目等履修生時代に履修した単位の引継ぎについて
ようやく本題である。先ほども引用したように、ウェブサイトでは
3.修得した単位は単位認定される場合があります。
科目等履修生として所定の期日までに修得した単位のうち、条件を満たしたものについては、正科生として入学した場合、卒業要件単位として認定される場合があります。
詳細は、正科生として入学後、確認してください。
と書かれている。私はこの文言にやや不安を覚えていたため、他の人がそんなわずらわしさを持たずに済めばよいなというのがこの記事の執筆動機である。
結論を言えば、スクーリング科目はスクーリング科目として、テキスト科目はテキスト科目として全科目単位認定された。ただし、これには一定の条件があるようだ。
私の認識している限りでは、
(1) 科目等履修生での学部/類と正課生での学部/類が一致していること
(2) 科目等履修生として単位を修得したのが、過去二年以内であること
(3) 科目等履修生から正課生になるまでに空白年がないこと
の3条件である。例を挙げるなら、
・経済学部として科目等履修生登録/単位修得をしたが、法学部に正課生として入学した場合
→(1)の条件を満たさないので単位認定されず
・2022年から2024年まで科目等履修生として3年間毎年10単位取得し、2025年に正課生として入学した場合
→一部(2)の条件を満たさない為、2022年の10単位は認定されず、2023年と2024年に修得した20単位のみ認定
・2023年に科目等履修生として単位取得したが、2024年は登録せず、2025年に正課生として入学した場合
→(3)の条件を満たさないので単位認定されず
となるのだろう。ただこれはあくまで私の知っている条件・私の解釈なので、正確な情報は事務局に確認されたい。
また、単位認定をもらうためには手続きが必須である。この手続きについては以前文句を書いたので、そのまま引用する。
2025/01/27 本科生として志望書を提出して数週間、 もし合格の場合は「2025/04/01以降発行の科目等履修生の在籍証明書」を4/11までに簡易書留で送ってくれとのメールがあり。(詰まるところ学内の二重学籍はできないから除籍の証明を送れとの目的らしい)
しかも、証明書発行についてwebで確認すると対面窓口は閉鎖され郵送対応のみとのこと。さらには証明書発行申請から発行までは7-10日かかる可能性があるらしい。間に合わねえじゃん。これを受け「3月中に申請書を送るから4/1日以降に証明書を発行して送付してくれないか」という旨を事務局に電話で連絡すると、申請書に朱書きで書いてくれれば対応できると返事をもらった。
3月下旬に申請書を送った後は音沙汰なし。4/5にようやく証明書が自宅に到着し仕事(といっても新人研修)の後に急いで隣町まで車を走らせ、閉店10分前の窓口に駆け込みようやく提出できた。
ここからは完全に愚痴なのだが、3月後半には申請書を提出済み、4/1に書類発行のくせして自宅に届いたのは4/5。せめて土日より前なら仕事後に提出しなくてもよかったのに......もっと早くならんのか。あとは作業中ずっとこの仕事のブルシットジョブさに辟易としていた。なんでこの令和の時代に東京から地方まで物理書類を取り寄せてさらにすぐさま送り返さなければならないのか?電子データにならないのか?発行手数料と申請書を送ってくれればあとは事務局で処理しますみたいなシステムにならないのか?という疑問で頭はいっぱいだ。
まあこんな感じで、手続きがやや面倒だったので覚悟されたい。
また、科目等履修生時代に修得した単位は「認定」となり、GPAには影響を持たない点にも注意されたい。GPAはGrade Point Averageの頭文字を取った、学生毎の成績の優秀さを計量する一つの指標である。慶応通信では、科目試験の成績によって単位がS、A、B、C、Dの4段階で評価される。それぞれを4、3、2、1、0に換算し、
GPA=(修得した科目の単位数×修得した科目の成績評価)÷ 修得した全科目数
として求める。特別課程(2年次編入に当たる)や学士入学(2.5年次編入に当たる)の場合には総合教育科目と呼ばれる所謂教養科目群が幾らか認定され、GPAには換算されない(上式中の修得した全科目数にも入らない)。これと同じように、科目等履修生時代に修得した単位も認定の扱いとなり、成績評価には影響されない。科目等履修生時代の科目はCもあればSやAもあったため平均すれば"平均的"なので別にいいが、ちょっと残念でもある。
また、ここでいう認定というのは、卒業要件に含まれるという意味である。卒業のためには合計124単位以上の修得や各入学課程に応じたスクーリング単位の修得、卒業論文単位の修得など幾つか条件があり、これらに含まれるということを意味している。
スクーリングについて、私の入学した"学士入学"では卒業までに15単位以上をスクーリングで単位取得する必要がある。現在の私のように地方に暮らす社会人にとって、夏休みに一週間~三週間も東京で暮らして授業を受け単位を取るというのは現実的ではなく、夜間スクーリングと呼ばれる平日夕方に授業を開講するシステムや秋季週末スクーリングと呼ばれる土曜午後と日曜午前に授業を受けるシステム、メディアスクーリングと呼ばれるオンデマンドの動画を見てレポートを書き科目試験に合格して単位を修得するシステムを利用することになるだろう。しかし、夜間や週末スクーリングも当然東京の三田キャンパスに伺う必要があるため東京近辺で働ける仕事に転勤・転職しない限りほぼ参加できないと言っていいだろう(週末スクーリングは交通費に目をつぶれば出来ないこともないけれど)。そこで一番現実的となってくるのがメディアスクーリングなのだが、これは合計で10単位までしか卒業要件に入らない為、学士入学であったとしても最低5単位はその他のスクーリングで修得しなければならない。
私はこの部分が気がかりであり、大学院生であった昨年度にスクーリング単位を科目等履修生として修得した。合計8単位を修得したため、残り全てをオンラインによるメディアスクーリングで修得することができ、運が良ければあと1回大学に行けば卒業できるかもしれない(科目試験は全て居住している地方会場(自宅からの移動に2時間かかるが三田キャンパスよりはるかに近いし交通費も安い)、卒論指導がオンライン(こればっかりは担当教員によるらしいので対面必須とする教授ならさらに3回ほど通う必要があるかもしれない)であれば、卒論試験の1回だけで済む)。
終わりに
だいぶ長くなってしまったが、慶應通信の科目等履修生と正課生入学についてである。
私のように学生時代から別の通信大学に入学を志す方は少ないと思われるため、最後の方はあまり関係ないかもしれないが、まずは科目等履修生として登録し様子を見て気に入れば正課生として入学したいという人もいるかもしれない。
10単位で11万円はやや高いものの、入学するのと比べれば半額くらいで済むだろうか。正課生としての入学時に検定料やら入学金の免除が有ったらうれしいなと思うもののスクーリングの為の投資としては十分リターンがあったと思う。また、レポートが鬼門と呼ばれる慶應通信において、どんな感じか・自分でも卒業できそうかというかという感覚をつかむのも結構有意義だろう(私はそこそこの難易度のテキスト科目を履修していたらしく、それも何とかクリアしたので卒業までやっていけると思った)。
通信大学は学位を得たいという志からの入学が多いとは思うが、それ以外の学びたいという志やら今はやりのリスキリングという観点で持っても非常に有意義なシステムであるように思われる。正課生としては年間20万円ほどかかるためやや高価ではあるが、月2万円程度の趣味だと思えば安い気がしなくもない。ぜひとも通信大学の門をたたく人が増えてくれればとの願いを示して、終わりにしたい。