あの人の指さえも今僕のもの
そんな歌詞に惹かれてどのくらい経つのだろうか。誓いの指輪を好い人のその指にはめて未来までをも縛る。
私にはどうも束縛の正しさを感ずることができないものの、誠にその思いを頂いてくれる人が、もしも私のそばにいるのであればどれ程幸いなのだろうか。
将来に対する唯ぼんやりした不安
そんな言葉を書き残して死んだあの小説家がために、私はいつまでも将来に対する唯ぼんやりした不安を抱えて生きている。きっと、誰もこの思いを言語化することがなければ、私はこんな不安な感情を認めずに生きることが可能だったろうに。
そんな小さな宝石で未来ごと売り渡す君が哀しい
と書いたのは松本隆だったろうか。『硝子の少年』。
人の言葉を借りてばかりで、いつまでも自分の言葉を喋れなくなる。陰鬱とした感情を胸に秘めたまま昼に笑い、徐々に抑圧が効かなくなり夜に泣く。そんな毎日を過ごすだけで何も成し遂げず、後悔した決断を何度も反芻し、決断し直しては反芻する。
ありとあらゆる種類の言葉を知って
何も言えなくなるなんてそんなバカなあやまちはしないのさ
何度も繰り返しては、何も言えなかった自分を恨む。ありとあらゆる種類の言葉を知るために何でもした。今までしなかったことも、行かなかったところも学ばなかったことも、様々手を出してきたつもりだったあの一年間。終に何も言うことができずただ偶然出会っただけのあなたとすれ違った。どうでもいい、心底どうでもいい日々を思い返してはどうにもならない心の内を嘆く。努力は嘘をつかないけれど喋ってくれるかもわからない。そんな逃避の言葉を思い浮かべて今日も為すべきことを為し、ただ眠るのでしょう。