ココボロだとか好きだとか

大学院生による独り言と備忘録

Goodbye, our Pastels Badges / さよならパステルズ・バッヂ(Flipper's Guitar)和訳

今日はGoodbye, our Pastels Badges / さよならパステルズ・バッヂの和訳です。邦題(もともと日本バンドだからこんな言い方しないか)は「さよなら僕らのパステルバッヂ」だと思ってましたが違うんですね。ただのタイトル直訳でした。

 

1Stアルバムの曲で後半の方にあったかな、ちゃんと覚えていないけれど。

MVは地下鉄の中で乗客に睨まれながら二人が闊歩するというもので、無許可撮影だったとどこかで聞いた覚えがあります。かまってちゃんかな

今回の和訳は注釈を終わりにつけみたいとおもいます。

 

以下和訳

 

さよなら僕らのパステルズ・バッヂ

別れなんていうのも、それはある種のハッピー・バースデイで

よお、ビートニック少年!青年たちよ!

十代の反抗は終わりやしないのさ

 

スコットランドからのはがきには

ハイランド※1は未だ豪雨だってさ

けれど今、そこには何にもなくて

僕はただ電車であのトラック※2 を聞いているだけ

 

ほら今、フリッジヘアーを切ってしまおう

ジェイムズ・カーク※3がはるか昔にしたみたいに

何もかもみんな捨ててしまって※4

少年は3つの思いを胸に秘めているに違いないね

 

アノラック※5 からバッヂを外すんだ

そして引き出しに仕舞って

あの頃の思いを、僕らは消して忘れないと誓うから

だからさようなら、然様なら

 

電車の中ではなにか悲しくて

どこからかカミソリが出てきて悲しみをどこかへやってくれる

そうさ、僕らのロリポップ※5 はいわゆる純粹なもので

だからこそ、お気に入りのシャツを脱ぎ捨てるのさ

 

 

注釈

※1 スコットランドの地名

※2 トラックメーカーという言葉を聞いたことがあるかもしれません。通常私達の聞く音楽は楽曲として複数のパート(GtやBa、Dr、Voなど)に分かれていますが、それぞれ単体の音源をトラックと呼びます。ヒップホップ、R&Bではトラックを背景にフリースタイル等でリアルタイムに音楽を作り上げてく文化もありますね。今回はパート単体の音源というよりも、iTunesとかでのトラック1、トラック2みたいに表記されるように、単に、一つの楽曲を指しているに過ぎないと考えています。

※3 スタートレックの主人公の名前

※4 「but our hairdresser should be a boy」 の意訳。私としては 「but our hairdresser should be like a boy's one」→「僕らのヘアードレッサーは少年のものと同じようにあるべき」という意味で捉え、「少年のヘアドレッサー」→「こだわりがなく、空っぽ」という印象から「全て捨ててしまって」という意味に訳しました。 あるいは「シンプルに」みたいな感じの意味だととらえています。

※5 アノラックは防雨、防風性のある服飾素材のこと。主にはアウトドア系のミリタリージャケットやマウンテンパーカーなどに用いられる素材で、ここでは単にジャケット(上着)のことですかね。

※6 ロリポップキャンディーは棒付きアメ(ペロペロキャンディーとか言うのかな)のことで、若さの隠喩と捉えています。ただ、フリッパーズの前身のバンド名はロリポップ・ソニックだったことから、その意味でもいいかと。

 

以上

 

 

あいかわらずフリッパーズらしい難解な歌詞ですが、このあとに続く曲が『やがて鐘がなる』であることからも、少年・青年を脱し成人する期間にいる若者の青春の懐古と踏ん切り的な歌詞だと思っています。

第一節目では、「十代の反抗は終わらない」とか「サヨナラはある種のハッピーバースディ→終わりは始まり」のような若さの終わりに対する前向きな考えを感じさせてくれますね。

第二節は、かつて憧れていたスコットランドの情景に変化がなく→「あの頃は先進だったのに変化しなかったせいで今では時代遅れ」→「だから僕は"今"の音楽ではなく"かつて"の音楽を聞き続ける」といったある種の失望感を歌っているのかな。

第三節では一節目と同じように決心、踏ん切りをあらためて伝えており、第四節でサビへ。

サビでは、バッヂ(若さや過去の隠喩)を服から外して引き出しに仕舞う。ここで言う引き出しに仕舞うという行為は可逆的なものであり、バッヂを外して過去に区切りをつけるけれど、それを捨てきれずいつでも取りに戻れるように保管しているという、なんとも言えない青々しさ、優柔不断さがみてとれます。

最終節で、悲しさという言葉が出てきますがこれは若さの終焉に踏ん切りをツケたけれどやっぱり悲しい。といった後悔の念、未練たらしさでしょうか。ただそれに、カミソリが出てきて悲しみをどっかにやってくれる。このカミソリは男性諸君では身近なひげを剃る道具であり、「髭の生えた男性→大人の意」だと私は捉えています。この部分結構好きです。男性は日常でひげを剃っていると思われますが、特に、なにか決心やかしこまった行事などの前では特に念入りにひげをきれい剃るのではないでしょうか。これは自分の中でけじめをつける行為の一種であり、だからこそ「大人の男性の決心」の隠喩として髭剃りが出てくるのだと思っています。

また、「僕らのロリポップは純粋」という文ですが、私には単に若い頃は純粋だったという意味にとらえています。彼らの前身であるバンド名と近しいですが、それは単に彼らがその言葉を好んで使っているだけであり、ロリポップ・ソニックの活動のみを指すような矮小な文では無く、もっと多義的に若さ=純粋さを表しているんじゃないかなあ。

そして最後の一文も、彼らの作品の名前に近いですが、それだけの意味ではなく、お気に入りのシャツを脱ぎ捨てて過去を清算する。区切りをつけるといった意味だと考えています。

 

また、和訳に出てくる「然様なら」ですが、私の好きな言葉です。別れの言葉は世界に様々ございますが、然様ならを現代語に訳すなら「あなたがそう言うのであれば」です。この奥ゆかしく、(私は離れたくありませんが)「あなたが言うならお暇しましょう」というこの語感はまさに日本文化を思わせます。今回の和訳では、自分の強い意志で別れを告げるというよりも、時間の経過で仕方なく決別せざるを得ないという雰囲気を感じたため、然様ならを用いています。

 

あと三分でPCの電源が落ちそうなのでここで終わり。

フリッパーズ永遠なれ!